見よ残香は汝にのみ不可視である

俺が主に作業する班にはヒエラルキーが3段階あってボスが1人いてその下に熟練者2名がおり俺と遅刻常習者であり風呂に入らない岡本というヒキガエルみたいな笑い方をするのが見習いの扱いでボスから毎日ハンマーで頭蓋を殴られておる。先日作業をしている折、先輩の片割れに土日何してた?とやかましいことを聞かれ、プライベートな質問につき心境はやれやれな容態であったが、いつものようにパチンコの話をされるよりかはマシだと思い、土日は一切外に出ることなくアニメに興じておりましたと俺が丁寧に答えたところ、それを聞いた先輩は日本のアニメは全部見たよと嬉しそうに豪語してくるものだからおいオタク、どんなアニメ見るんよの探り合いスタートである。ギャグアニメが好きだと語る先輩に俺は問う。先輩、ぷにぷに☆ぽえみぃは如何でしたか。曰く、え、なにそれ。改めて問う。では、まじかる?ぽか〜んなどは如何でしたか。あれは良いアニメでしたねえ。復た曰く、それ見たことないわ。などと、埒の開かないやりとりをしていると監督者がやってきて、先輩に向かって岡本(その日1時間遅刻すると連絡を寄こしてきたのに2時間経っても来ていない)は本日はお休みです、あと岡本これからはもう来ませんので、と告げ、俺は横でそれを捕食された牛ガエルのような表情で聞いていた。ディン!ドン!である。目の前の見えぬところで死人が出た。首チョンパ、である。岡本は風呂にさえちゃんと入れば悪いやつではなかったし作業をするにあたって役に立つ人間ではあったので二度と来られないとなると惜しい気もしたが、あいつは風呂に入らないのでその点については死刑で良い。俺も過去に家に引き篭もり1ヶ月に一回しか風呂に入らなかった時期があったが、それゆえコンビニの店員にすこぶる嫌われたので、以来自分のにおいというものに恐怖心がある。身から出た錆はかちかち山のたぬきであり、人の精神に依る性質である。

見よ人影は消える

汝亀鑑たるを忘れ己の羞悪を省みよ と思い立ち、俺って人間としてどこらへんが駄目だと思う?って他人に聞こうと、昔から俺を知りながらもかろうじて俺の携帯に電話番号が残っておる人々に色々電話かけてみた結果ほとんどの人がそもそも電話出なくてまあそれは想定内だったんだが唯一奇跡的に出たのも平日の昼間から寝ぼけたような声で誰ですか?と知らんぷりぷりしてきたのでおいおいとぼけちゃって〜まったくお前ってやつぁ〜という心持ちで話を続行せしめるもどうやら本当に俺のこと知らないというか知らないはずはないんだけど蜘蛛の巣が絡み雨に濡れ泥にまみれページというページがお前、辞書か?というくらいに重苦しくそして水分によって癒着し読むこと能わざる学校の裏山に捨てられしエロ本のごとく忘却の彼方にやられていたようすで、いやいやいやw名が「す」ではじまって「た」で終わる者なんだが〜?wと言っても知らぬ存ぜぬを通されてやむなくハーすみません掛け間違えたみたいです、ツー、ツー、と、ツー、ツー、まで口で表現してから電話を乱暴に切り、受話器から発せられるツー、ツー、を冷徹な心境で聞きながら俺ってばこういうところが駄目だよねと深く自戒し、布団へ